「やさしい日本語」には、2つの意味があります。
- 簡単な日本語: わかりやすい言葉を使う。
- 相手を思いやる日本語: 相手の気持ちを考えて話す。
利用者の中には、耳が聞こえにくかったり、新しいことを覚えるのが難しかったりする人もいます。私たちが話し方を少し変えるだけで、利用者はとても安心して過ごすことができます。
1. 文(ぶん)を短く切る

一番大切なルールは、「1つの文に、1つの情報(じょうほう)だけ」を入れることです。
✕ 長い言い方
「お昼ご飯の準備ができましたから、あちらの洗面所(せんめんじょ)で手を洗ってから、こちらの席に座ってくださいね。」
〇 短い言い方
「お昼ご飯ができました。
まずは、手を洗いましょう。
次に、いすに座ってください。」
【例文をもっと増やす!】
- 「お風呂の準備ができました。タオルを持って、一緒に来てください。」→「お風呂の 準備が できました。タオルを 持って ください。一緒に 行きましょう。」
- 「外は雨が降っていて寒いので、この上着を羽織ってから出かけましょうか。」→「外は 雨です。寒いです。この 上着を 着ましょう。それから 出かけましょう。」
2. 難しい敬語(けいご)は使わない
「です・ます」や「~してください」を使えば、十分に丁寧です。
✕ 難しい言い方
「お薬をお召(め)し上がりいただけますでしょうか?」
「どちらへ向かわれますか?」
〇 わかりやすい言い方
「薬を飲みましょう。」
「どこへ行きますか?」
【例文をもっと増やす!】
- 「少々お待ちいただけますでしょうか?」→「少し 待って ください。」
- 「ご気分はいかがでしょうか? どこかお悪いところはございませんか?」→「気分は どうですか? どこか 痛いところは ありますか?」
- 「左手をお通しいただけますか?」→「左手を 入れて ください。」
3. シーン別:すぐ使える「やさしい声かけ」
① 朝のあいさつと着替え
朝は利用者も頭がぼんやりしています。ゆっくり話しかけましょう。
- 「おはようございます。よく眠(ねむ)れましたか?」
- 「朝のご飯ですよ。起きましょう。」
- 「着る服を選びましょう。青い服と、赤い服、どちらがいいですか?」
- 「カーテンを 開けますね。明るく なりますよ。」
- 「顔を 拭(ふ)きましょう。温かくて 気持ちいいですよ。」
② お風呂(入浴)のとき
お風呂は服を脱ぐので、不安になる利用者もいます。
- 「お風呂の準備ができました。一緒に行きましょう。」
- 「お湯の温度は大丈夫ですか?」
- 「ゆっくり温まってくださいね。」
- 「足元(あしもと)が 滑(すべ)りやすいです。私の 腕を つかんで ください。」
- 「肩(かた)に お湯を かけますね。熱くないですか?」
- 「石鹸(せっけん)で 背中を 洗いますね。」
③ 食事(しょくじ)のとき
楽しく、安全に食べてもらうための声かけです。
- 「今日のおかずは 魚ですよ。おいしそうですね。」
- 「お茶を 飲みましょう。喉(のど)を 潤(うるお)しましょう。」
- 「ゆっくり 噛(か)んで 食べて くださいね。」
- 「エプロンを つけましょうか? 汚(よご)れませんよ。」
④ トイレ(排泄(はいせつ))のとき
恥ずかしいと感じる場面です。優しく、さりげなく聞きしましょう。
- 「トイレに行きますか?」
- 「何か困ったことはありますか?」
- 「(終わったあと)スッキリしましたか?」
- 「ズボンを 下ろしますね。失礼します。」
- 「終わったら このボタンを 押して ください。すぐに 来ます。」
4. はっきりと言い切る
「~なんですが……」と最後を言わない話し方は、利用者が困ってしまいます。
✕ あいまいな言い方
「お部屋の掃除(そうじ)をしたいと思っているんですが……」
〇 はっきりした言い方
「お部屋を掃除します。あちらのいすに座って待ってください。」
【例文をもっと増やす!】
- 「爪(つめ)が少し伸びているような気がするんですが……」→「爪が 伸びて います。切りましょう。いいですか?」
- 「レクリエーションが始まる時間なんですけれど……」→「今から 歌を 歌います。一緒に 行きましょう。」
5. 言葉以外の「やさしい」工夫(くふう)
- 笑顔とアイコンタクト同じ目線の高さで、目を見て話しましょう。
- ジェスチャー(身ぶり・手ぶり)「歯を磨(みが)きましょう」と言いながら、自分も歯を磨くマネをします。
- 実物(じつぶつ)を見せる「お茶を飲みますか?」と聞くときは、コップを見せながら聞きます。
- 「3秒待つ」声をかけたあと、利用者が考える時間をあげてください。すぐに返事がなくても、ゆっくり待ちましょう。
6. 専門用語(せんもんようご)を言い換える
スタッフ同士の言葉を使わないように気をつけましょう。
- 「移乗(いじょう)します」→ 「いすからベッドへ 移(うつ)りますね。」
- 「臥床(がしょう)しましょう」→ 「ベッドに 横に なりましょう。」
- 「失禁(しっきん)されました」→ 「ズボンが 濡(ぬ)れましたね。着替えましょう。」
- 「健側(けんそく)から動かしましょう」→ 「動きやすい 方の 足から 動きましょう。」
7. まとめ:利用者の「味方(みかた)」になりましょう
- 文を短くする。
- 簡単な言葉を使う。
- 最後まで、はっきり言い切る。
- 笑顔とジェスチャーを一緒に使う。
利用者は、あなたのことを家族のように頼りにしています。難しい日本語を完璧に話そうとしなくて大丈夫です。「どうすれば この人に 伝わるかな?」という優しい気持ちが、一番の安心につながります。
今日からひとつでも、新しい例文を使ってみてくださいね!
